◆◇概要◇◆
2018.10.2~2019.1.19のバックパッカー旅行中、日記をほぼ毎日つけていました。
それを加筆修正し、晒して供養しようというものです。
スロヴェニアのコペルからイタリアのヴェネツィアへ移動、後編です。
前編はこちら。↓↓↓
今回はもう、タイトルの通り。
ヴェネツィア名物の高潮アクア・アルタの洗礼を受けました。我ながらナイスタイミング。この旅で5本の指に入るほど強烈な印象を残した出来事です。
水の都ヴェネツィア。
世界中から毎年多くの人が訪れる言わずと知れた美しい水上都市ですが、
そんなヴェネツィアを悩ませているのが、秋から冬にかけて発生する異常高潮のアクア・アルタ。
海面水位の上昇により運河の水が溢れ、街や建物内までもが水に浸かってしまいます。
実は恥ずかしながら、それまでの私はアクア・アルタの存在をしっかり認識しておらず。目の当たりにして初めて「そういえば日本でもこんなようなニュース見たことある気がするな…」という程度でした。
後から知ったのですが、この日のアクア・アルタは世界的なニュースになるほどの潮位を記録していたそう。日本でも報道されていたようで、数日後に友人から安否確認のLINEが来たほどでした。写真送ったらウケてた。
Wikipediaによると、なんとその日は1923年以降で5番目に潮位が高かったらしいです(2021年9月現在)。
そんな最凶レベルのアクア・アルタを身をもって体験できたのは、ある意味貴重だったかもしれません。
10/29(月)後編 くもりのち雨
3年ぶりのヴェネツィア。大学の卒業旅行以来だ。前来た時には出来なかったことをするんだ!!
期待に胸を膨らませながら降り立つが、すぐに周囲の様子がおかしいことに気づいた。
なんというか、まわりの人々全員が戸惑っているような。そしてあちこちで聞こえるどよめきと、不自然に濡れた地面。不穏な空気を感じる。
何だ何だと運河を見に行くと。
めっちゃ水溢れてるーーーー!!!!
なんだこれ!!!!道にまで運河の水が溢れている!!!!えっっっなんだこれ!?!?
えっまじでなにこれ。どうすりゃいいの。入っていいの。だめなの。というか行けるの。
今日の宿、めちゃめちゃヴェネツィア島の内部なんだけど。
ど、どうしよう…。
あまりにも現実味の無い光景に、頭が追いつかない。
ひとまず心を落ち着かせ、周囲を観察する。
私のように戸惑いうろたえる人や、諦めて引き返す人もいる。だがよくよく見ると、意外と多くの人が冠水した道を頑張って歩いている。
長靴を履いている人、ビニールのカバーみたいなものを履いている人(売店に売ってるっぽい)、サンダルの人、裸足の人…。
※観光客は↑のカバーを買う人が多いよう。
ということは、通行止めとかでは無いんだな。少なくとも、島内に入ることは禁止されていないようだ。
そうと決まれば話は早い。私は迷わずズボンをたくし上げ、靴と靴下を脱ぎ、持っていたサンダルに履き替えた。
これくらいで怯んでいては、この旅は続けられん。意外と迷いは無かった。
Googleマップを起動。現在地からホステルまでは約20分。フェリーに乗って大運河を渡ればすぐに着くようだ。意外といけそう。
腹をくくっていざ突撃。足を水の中に踏み入れる。
つ、冷たい。でも慣れれば平気。学校のプールと同じ現象。
水に浸かったヴェネツィアの道をバシャバシャ進む。
いや、なにこれ。
着いたときも思ったけど、進めば進むほどなにこれ感が増していく。完全に異常事態。
美しい街並みが水没しかけている。そこを人々がバッシャバシャ通る。
なにこれ。シュールすぎやしないか。
もはや面白くなってきた。なんだこの状況は。これは現実か。
自分でも妙なテンションになっているのが分かった。興奮しながら歩みを進める。
重い荷物(約10kg)を背負いながら足元の悪い道を進むという苦行だったが、目の前に広がる光景が面白すぎてあまり気にならなかった。
街のレストランやお土産屋さんなども、店内まで浸水していた。なんて気の毒な。後日営業できるのだろうか。
なんて心配していたが、よく見るとだいたいどこのお店にも水を店外へ出す謎の機械?設備?があった。そんな機械があるということは、この冠水はあるあるなのか?
そういえば、日本でもたまにニュースで見たことあるような気がしてきた。ヴェネツィアが高潮で冠水…みたいな。
最初は足首が浸かる程度だったが、奥へ進むうちに水位が高くなっていった。だいたい膝下、ところにより太ももまで水が迫っている。まあ私の足が短いってのはある。私が膝下ぐらいのとき、向こうから来る背の高いおじさんはふくらはぎくらいだったし。くっそー。
歩くこと約30分。なんとかフェリー乗り場にたどり着く。
通常なら15分ほどの距離らしいが、やはり時間がかかってしまった。
何はともあれ無事にここまで来れた。一安心だ。
待合室でフェリーが来るのを待つ。対岸で降りれば、歩いて数分でホステルに着くはずだ。なんだ、意外と余裕だったな。
待合室にはだんだん人が増えていった。全員が、フェリーが来るのを今か今かと待っていた。
しかし、10分経っても30分経っても、1時間経っててもフェリーが来ない。
こんな状況だし遅れてんのかな、しょうがないね、なんて思っていたけど、1時間が過ぎたあたりで嫌な予感がしてきた。
待合室はもはや人で溢れかえっている。雨は引き続き降ったり止んだり。高潮は引く気配が全くない。
やがて船に乗った警察が来て(パトカーならぬパトボート?)、拡声器でアナウンスをした。
「今日は危険なのでフェリーはもう来ません。水上タクシーを使うか、歩いてください。」
えええええええ。
なんっだよそれえええええええちっくしょー!!!!
行き場のない怒り。脱力感と絶望感。もはやわろける。
…まあ座って休めただけ良しとしよう。気合いを入れ直して歩くことに。
ちょうど雨が止んでいたのがせめてもの救い。
マップを再起動。
歩いてホステルまで行くとなると、大運河を渡るために大きな橋(アカデミア橋)へ向かう必要がある。つまり最初に調べた経路よりも遠回りをしなければならなかった。
Oh…なんで大運河の向こうのホステルなんて取ったんだ私…。
※憧れのヴェネツィアで、地元民になったつもりで暮らすように滞在したいという願望があったためです
最初はこの異常事態の中を歩くのはワクワクした。土産話になりそうなおもしろ体験ができたなとさえ思った。
でも流石に、ここまでくると嫌になってくる。
バックパックが重く体にのしかかる。水の抵抗で死ぬほど歩きづらい。さらにはヴェネツィアの迷路のようなややこしい道。めちゃめちゃ迷って時間がかかる。
帰りたい。
ヴェネツィアに着いて2時間半。期待に胸を膨らませながら到着したが、もはやこの街を離れたくなっていた。
疲れた。寒い。重い。しんどい。帰りたい。早く着いてくれ。
序盤のハイテンションはどこへやら。とぼとぼと歩みを進める。
やっとの思いで大運河を渡る。こんなにも気が狂いそうなシチュエーションだが、アカデミア橋から見るヴェネツィアの景色は美しかった。
橋を渡り、やっとの思いでホステル周辺にたどり着く。HP尽きそう。
が、困ったことにホステルの入り口がわからない。
近くにいるはずなのに。どうしよう分からん。看板も何もない。困った。疲れた。困った。どうしよう。
周辺を挙動不審にウロウロしてると、女の子が通りかかり、とある建物に入っていった。
かと思うと、彼女がその建物の入り口から、「もしかしてあなたホステル探してる?」と声を掛けてくれたではないか。イエッッッス!!!!「ここの上よ。」ああああなたが女神か。ありがとう。
女神と一緒に建物の階段を登る。同じく宿泊客で、やはりこのホステルを探すのに苦労したそう。
こうして無事チェックイン。スタッフのお兄さんはホステルの設備について丁寧に説明してくれた。キッチンは、ヴィーガンの人への配慮のため、肉の調理は禁止とのこと。買ったお肉を食べるのは問題ないらしい。このパターンは初めてだなぁ。
荷物を置いて、とりあえずベッドに横になる。ヴェネツィア到着から約3時間が経っていた。
つっっっっかれた…。大変だったよ…。もう何もしたくないよ…。
そんな状況でも(そんな状況だから?)、しっかり腹は減る。おなかすいた。時刻は17時過ぎ。あたりは暗くなり始めている。早く行かなきゃお店閉まっちゃうかな…。
疲れた体に鞭を打ち、食料を確保しに行く。相変わらず道は水でザッバザバ。
ホステル近くの小さな売店に行く。パンがあるか聞くが、売り切れてしまったとのこと。残念。
周辺のレストランを覗く。浸水しながらも営業しているお店はあった。だが、こんな心身ともにボロボロの状態で、ヴェネツィアの洒落たお店で外食する気分になれない。かと言ってスーパーまで足を伸ばす元気もない。とぼとぼ帰る。
おなかすいたな…。今日はハッピーコーラ(グミ)とコペルで買った謎のチョコバナナのお菓子と、いつぞや買っておいたカップスープの素で凌ごう。おなかすいたな…。しょんぼり。
シャワーを浴びて荷物の整理をする。おなかすいたな…。
バックパックの底から、使いかけのスパゲッティ乾麺を発掘した。どこかで買ったやつだ。茹でて食べるか?素パスタに塩かけて食べるか?
そういえばカップスープの素もあったな。ちょっと待って、パスタと和えたらそれなりのものできるんじゃ…?
さっそくホステルのキッチンでやってみた。
うんうまい!!残ってた粉チーズと、キッチンにあった胡椒もかけて正解!!私は天才か!!!!いやーーー助かった命拾いした!!染みるわぁ~。今後はパスタとカップスープの素を常備しようかな。
というか前にザルツブルクで得た教訓、「移動先で食料にありつけると思うな」を忘れていた。再び胸に刻む。23時就寝。
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